2006年 02月 12日
佐藤優『国家の罠』 国策捜査とは |
そして本書のクライマックス、検察対筆者の部分。
119ページ
私が見るところ、(日本人の)ナショナリズムには二つの特徴がある。第一は、「より過激な主張が正しい」という特徴で、もうひとつは「自国・自国民から受けた痛みはいつまでも覚えているが、他国・他国民に対して与えた痛みは忘れてしまう」という非対称的な認識構造である。ナショナリズムが行き過ぎると国益を毀損することになる。私には、現在の日本が危険なナショナリズム・スパイラルに入りつつあるように思える。
229ページ
(差し入れのノートに署名・指印する)そのとき、担当看守が突然上の方を向いて言った。
「これから言うのは俺の声じゃないぞ。天の声だ。ノートに大切なことは書くな。時々覗く奴がいるからな。取り調べについて重要なことは書いたらだめだぞ」
その後、担当看守は何事もなかったように立ち去っていった。
5月17日の金曜日に佐藤昭子『決定版私の田中角栄日記』(新潮文庫)を借りた。国策捜査の先例として、この本から何かヒントが得られないかと考えたからだ。
231ページ
私の見立てでは、この(西村)検事は知的好奇心が強い。司法官僚として事件を作り上げることだけでは満足できず、本当は何があったのかということを自分で納得したいという性格なのだ。西村氏を職人型の性格であると私は分析した。
271ページ
(検事の)西村氏が「鈴木(宗男)先生の対露外交はしっかりしているという話をしたら、うち(特捜部)の連中から「西村は佐藤に洗脳されている。大丈夫か』といわれた」と冗談を言っていた。ロシア語の諺で「冗談には必ずある程度の真理がある」というが、外交問題を猛勉強する西村氏の姿に若干の危惧を覚えた同僚検察官がいても不思議ではない。
287ページ
国策捜査は「時代のけじめ」をつけるために必要だというのは西村氏が初めに使ったフレーズである。私はこのフレーズが気に入った。
「これは国策捜査なんだから。あなた(佐藤優)がつかまった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜査は『時代のけじめ』をつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです」
300ページ
国策捜査とは、国家がいわば「自己保存の本能」に基づいて、検察を道具にして政治事件を作り出していくことだ。冤罪事件と違って、はじめから特定の人物を断罪することを想定した上で捜査が始まるのである。
301ページ
「ただね、国策捜査の犠牲になった人に対する(検事側の)礼儀というものがあるんだ」
「どういうこと」
「罪をできるだけ軽くすることだ。形だけ責任をとってもらうんだ」
「よくわからない。どういうこと」
「被告が実刑になるような事件はよい国策捜査じゃないんだよ。うまく執行猶予をつけなくてはならない。国策捜査は、逮捕が一番大きいニュースで、初公判はそこそこの大きさで扱われるが、判決は小さい扱いで、少し立てばみんな国策捜査で摘発された人々のことは忘れてしまうというのが、いい形なんだ。国策捜査で捕まる人たちはみんな大変な能力があるので、今後もそれを社会で生かしてもらわなければならない。うまい形で再出発できるように配慮するのが特捜検事の腕なんだよ。だからいたずらに実刑判決を追及するのはよくない国策捜査なんだ」
結論から言えば、佐藤優氏は執行猶予がついて、控訴審に移ったらしいです。
上記の文脈から見ると、社民党の某女性議員が捕まったのも国策捜査であって、だからこそ再び国会議員に当選して、昨日国会で総理大臣に質問する、という流れになったのかな、と思います。そういえば鈴木宗男も復帰してますねぇ。
ちなみにブタベは、北方領土や竹島なんて問題になるくらいなら呉れてしまえ、という立場の人間なので、日本が全体主義の方向に向かったら真っ先に国賊としてつるし上げられてしまいそうです。や、領土の重要性は分かるんですが、負けた国ですしねぇ。中国や韓国に戦後、奪った分を同じように搾り取られていたらどうなっていたか(復帰前の沖縄状態かな)、と考えれば簡単だと思うのですが。
どうやらまた外務大臣がマヌケなことを言い始めたらしいですが、自民党の先生方の時代錯誤もどうにかしてほしいものです。
119ページ
私が見るところ、(日本人の)ナショナリズムには二つの特徴がある。第一は、「より過激な主張が正しい」という特徴で、もうひとつは「自国・自国民から受けた痛みはいつまでも覚えているが、他国・他国民に対して与えた痛みは忘れてしまう」という非対称的な認識構造である。ナショナリズムが行き過ぎると国益を毀損することになる。私には、現在の日本が危険なナショナリズム・スパイラルに入りつつあるように思える。
229ページ
(差し入れのノートに署名・指印する)そのとき、担当看守が突然上の方を向いて言った。
「これから言うのは俺の声じゃないぞ。天の声だ。ノートに大切なことは書くな。時々覗く奴がいるからな。取り調べについて重要なことは書いたらだめだぞ」
その後、担当看守は何事もなかったように立ち去っていった。
5月17日の金曜日に佐藤昭子『決定版私の田中角栄日記』(新潮文庫)を借りた。国策捜査の先例として、この本から何かヒントが得られないかと考えたからだ。
231ページ
私の見立てでは、この(西村)検事は知的好奇心が強い。司法官僚として事件を作り上げることだけでは満足できず、本当は何があったのかということを自分で納得したいという性格なのだ。西村氏を職人型の性格であると私は分析した。
271ページ
(検事の)西村氏が「鈴木(宗男)先生の対露外交はしっかりしているという話をしたら、うち(特捜部)の連中から「西村は佐藤に洗脳されている。大丈夫か』といわれた」と冗談を言っていた。ロシア語の諺で「冗談には必ずある程度の真理がある」というが、外交問題を猛勉強する西村氏の姿に若干の危惧を覚えた同僚検察官がいても不思議ではない。
287ページ
国策捜査は「時代のけじめ」をつけるために必要だというのは西村氏が初めに使ったフレーズである。私はこのフレーズが気に入った。
「これは国策捜査なんだから。あなた(佐藤優)がつかまった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜査は『時代のけじめ』をつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです」
300ページ
国策捜査とは、国家がいわば「自己保存の本能」に基づいて、検察を道具にして政治事件を作り出していくことだ。冤罪事件と違って、はじめから特定の人物を断罪することを想定した上で捜査が始まるのである。
301ページ
「ただね、国策捜査の犠牲になった人に対する(検事側の)礼儀というものがあるんだ」
「どういうこと」
「罪をできるだけ軽くすることだ。形だけ責任をとってもらうんだ」
「よくわからない。どういうこと」
「被告が実刑になるような事件はよい国策捜査じゃないんだよ。うまく執行猶予をつけなくてはならない。国策捜査は、逮捕が一番大きいニュースで、初公判はそこそこの大きさで扱われるが、判決は小さい扱いで、少し立てばみんな国策捜査で摘発された人々のことは忘れてしまうというのが、いい形なんだ。国策捜査で捕まる人たちはみんな大変な能力があるので、今後もそれを社会で生かしてもらわなければならない。うまい形で再出発できるように配慮するのが特捜検事の腕なんだよ。だからいたずらに実刑判決を追及するのはよくない国策捜査なんだ」
結論から言えば、佐藤優氏は執行猶予がついて、控訴審に移ったらしいです。
上記の文脈から見ると、社民党の某女性議員が捕まったのも国策捜査であって、だからこそ再び国会議員に当選して、昨日国会で総理大臣に質問する、という流れになったのかな、と思います。そういえば鈴木宗男も復帰してますねぇ。
ちなみにブタベは、北方領土や竹島なんて問題になるくらいなら呉れてしまえ、という立場の人間なので、日本が全体主義の方向に向かったら真っ先に国賊としてつるし上げられてしまいそうです。や、領土の重要性は分かるんですが、負けた国ですしねぇ。中国や韓国に戦後、奪った分を同じように搾り取られていたらどうなっていたか(復帰前の沖縄状態かな)、と考えれば簡単だと思うのですが。
どうやらまた外務大臣がマヌケなことを言い始めたらしいですが、自民党の先生方の時代錯誤もどうにかしてほしいものです。
by scluge
| 2006-02-12 00:24
| 本読風情