2006年 04月 04日
『夜明け前より瑠璃色な』-フィーナ・ファム・アーシュライト |

『そういえば、月の人は温泉って知ってるんだろうか?』
そんなことを考えたら、描かずにはいられず、昔の絵を引っ張り出して、フィーナで描き直し。『夜明け前より瑠璃色な』ゲーム本編で風呂のシーンはともかく(多分あるんでしょうけど)、銭湯だったり、温泉だったりはないような気がします(そもそも、銭湯は大使館の人が許さないでしょうし)。
で、フィーナが温泉に行ったらどうなっちゃうんでしょうねぇ・・・という話。
―――――――
麻衣が商店街の福引きで温泉チケットを当てたので、フィーナとミアも連れて温泉地に来てみた。
温泉は最後のバス停から山道を延々と歩いた先。
こんな道で女の子たちに荷物を持たせられないので、一人で全部担ぐことにした。
宿に着いたとたん、疲れが出たのか座敷で眠っていた俺は…いつの間にやら夜になって、すでにみんなが寝てしまっていることに気付いた。
時計の針も日付が変わったことを示している。
ふと窓から外を見ると、十六夜月が空に浮かんでいた。
「まぁ…今からでも入るか」
旅館の人にはいつでも入っていい、とチェックインのときに言われている。
荷物から手ぬぐいを引っ張り出して、部屋を出た。
縁岩に背を預けて、肩までどっぷりと湯に浸かる。少しぬるいけどそれも心地よい程。
「ふぅ~~~っ」
緩んだため息が、口から漏れる。
正直、みっともないので家族たちには見せたくないところだ。もちろんフィーナにも。
漆黒の夜空に見事な十六夜月が浮かんで、静かに湯殿を照らしていた。
「月…か」
いつも見えているのに一番遠い場所…だった。
だけど、一人の女の子が家に来てからは、まったく違う場所になった。
「…い~い湯だな~…♪」
ふわふわとお湯の中で浮かびながら、頬をなでる涼しい夜風を楽しむ。
「達哉、やっぱりここにいたわね」
「うわわああっっ!!」
不意にかけられた声に思いっきり飛び上がる。
「…どうしたの?」
普段出したことのない悲鳴に、戸惑い気味の顔を向けてくる月の国のお姫様。
「ごごご、ごめん、フィーナ…って、何でここに…?」
一瞬フィーナを見てから、すぐに目をそらした。
湯煙の向こうにいたのは一糸まとわぬ…いや、手ぬぐいで胸と大事なところを隠しているだけの彼女だった。
「何でって…旅館の人に、そのうち月が出るから入ってみるといいって聞いて」
そう言いながら、手桶で身体を流して湯船に入る。
どうやら、さっき姉さんたちと入ったときには月が出てなかったらしい。
「月が出ていると…雰囲気がちょっと違うわね」
故郷を眺めながら、お姫様がぼそっとつぶやく。
俺は、と言えばさっきとは逆にフィーナから目が離せなくなってしまっていた。
柔らかい月明かりに照らされたフィーナの白い肌が、いつもの五割り増しで色っぽい。
何よりも、お湯の中でぷかぷか浮いている彼女の胸が…
「…って、そんなことよりも!!」
「達哉?」
「ここ、混浴じゃないだろ!」
確か、俺は男湯と書かれた暖簾をくぐったはずだ。
それに家ならともかく、こんないつ誰が来るとも分からないところでフィーナが…
「温泉に行ったら恋人同士は一緒にお風呂に入るものだと聞いたのだけれど」
「………えっと…」
「それに、さやかが今日泊まっているのは、わたしたちだけみたいだって言って…」
「…はぁ…」
いくつか根本的に間違っているような気がするが、いまさら言ってもどうしようもないので、諦めることにする。
「ところで達哉」
「うん?」
「そっちに行ってもいいかしら」
「……ああ」
頷く俺を見てゆっくりと湯船の中を近づいてくるフィーナ。
俺の目は相変わらずゆらゆらとゆれている二つのふくらみに釘付けのままで…
そんなことをしているうちに、フィーナが俺の隣に座る。
ピトッと肩が触れ合った瞬間、電気のような衝動が身体を走ったが何とか押さえ込んだ。
「達哉は何を見てたの?」
動揺する俺を知っているのか知らないのか、ホーリーグリーンの瞳が俺を見つめる。
かと言って、フィーナの胸を見ていた、なんて言えるわけもない。
「月を見ていたんだ」
「そう」
二人して、頭上のちょっと欠けた月を見上げる。
すぐそばにいる恋人の、遠く離れた故郷。
とても近くて、とても遠くて、すごく明るいのに、いつでも翳ってしまいそうなぼんやりとした光。
「不思議なものね」
「フィーナ?」
「月からこんなに離れてしまっているのに、あまり寂しくないの」
「それは…」
「やっぱり達哉がいるからかしら?」
微笑んだ彼女の顔に少しだけ寂しさがにじんだような気がする。
いくら王室公認とはいえ、フィーナには公務もある。俺にもまだ自分の生活がある。
だからいつでも、一緒と言うわけには行かない。少なくとも、今は。
「そう…かもな」
だから俺はフィーナにそっと口付けた。
いま、一緒にいるこの時間を大切にしたかった。
「んぅ…ふぁ……達哉…」
こんなことをしながら、思いっきりのぼせた状態で俺たちが湯船から上がったのは、月が少し傾いてからだった。
―――――――
プレイしてないのは致命的だと思ったお話なのでした。参考資料がクロニクルだけというのはやっぱりまずい気が(笑)
つか、長すぎ。もうちょっと纏められないとだめですね。
by scluge
| 2006-04-04 22:02
| 絵