2007年 09月 10日
Canvas2 Short Story 『未来は白にも黒にも』 (一) |
この街に、いつもの年と同じように、秋の風が流れている。
俺、麻生大輔が撫子学園を卒業してから一年と半年ほどの時間が経っていた。
学園にいるときから色々あったけど、つまるところ俺は今も絵を描き続けている。
昔と違うのはただひとつ、『描きたいもの』がちゃんとある、ということ。
絵描きにとって、結局はそれに尽きるのだから。
「やっほー。たっだいま、大輔♪」
「ああ、お帰り、恋」
家のドアを思いっきり開けたと思ったとたん、元気な声がリビングに飛び込んでくる。
輝く笑顔を見せながら入ってきたのは、俺の義理の妹の恋。
大学生とモデルを兼業しているが…俺にとっては『ちょっとやかましいけど可愛い妹』といったほうがいいだろうか。
「同じ国なのに、こっちは結構涼しいわね~」
「沖縄に比べりゃ当然だろ。どうだった?」
「うん、ばっちり。ロケやるならやっぱりあったかい海よね♪」
にっこり笑ってから恋が上着を脱ぎ出す。
…いくらなんでもノースリーブの服じゃ、上着着てても冷えるだろうが…どうやらお気に入りらしいのでほうっておく。
「はは、そうだな。そんなに上機嫌なら次の写真集も期待できるかな」
「お兄様の期待には背きませんよ~♪」
「お前の『お兄様』には裏がありそうで怖いよ」
恋の親友の藍ちゃんの『お兄様』ならいざ知らず、こっちのほうはあとで何をされるか分かったものじゃない。
そんな俺のため息交じりの言葉を、少し残念そうな顔で恋が受け流す。

「…天邪鬼なんだから。そういえば、橘せんぱ…じゃなかった。天音さんは?」
「悠姉さんのところで料理習ってる」
「篠宮先生? あの二人って、もう本当の姉妹?っていうくらい仲良いわよね~」
「まぁ、仲がいいのは助かるよ」
「やっぱり、どっちも大輔の幼馴染だからかしら? 本音を言うと、どっちをお嫁さんにするか結構迷ったんじゃない?」
「………あんまりそういうこと言うと俺も怒るぞ」
「ふふっ、顔赤くなってるわよ。大丈夫よ。大輔が天音さん一筋なのはよーく分かってるんだから」
「…………もういい…」
ウィンクしている恋が可愛いのはともかく、このネタでからかわれるのは、正直かなり疲れる。
少し前、俺や天音の両親たちといった身内に、天音との正式な婚約を報告してから、恋のそういうからかいがかなり増えた気がする。
何を思ってるのかは知らないが…。
俺の戸惑いをよそに、ソファ越しに体を乗り出してくる。
「ところで、大輔はソファに座り込んで何読んでるの?」
「ん? ああ、藍ちゃんから送られてきたんだ」
「藍から? んー、何々…これって経歴書じゃないの。それに絵の写真が何枚も…」
「ちょっと見てほしい、ってさ」
「絵描きさん?」
「多分な。まだ学生みたいだけど」
「へー…もしかして麻生大輔画伯のアシスタント候補、とか?」
「アシスタントなんて雇える身分じゃないって」
「謙遜しちゃって。で、どんな人なの。えっと……上倉…浩樹?」
というわけで、もうお分かりかとは思いますが、Canvas2のお話なのに、実は2のヒロインはほとんど出てこない予定です。ちなみに恋がメインのお話でもないのであしからず(笑)
時系列としては浩樹が撫子に赴任する半年前の秋ということになります。無論その年の春には浩樹にとっては厄介なあの一件があるわけで…。その辺までちゃんとお話に出来るかはわかりませんが、のんびりと書いていきたいと思います。なんとなくCanvas1.5くらいのつもりで(『なでしこ』ではないですが…)
(二)のメインは多分あの理事長先生です(^^)
俺、麻生大輔が撫子学園を卒業してから一年と半年ほどの時間が経っていた。
学園にいるときから色々あったけど、つまるところ俺は今も絵を描き続けている。
昔と違うのはただひとつ、『描きたいもの』がちゃんとある、ということ。
絵描きにとって、結局はそれに尽きるのだから。
「やっほー。たっだいま、大輔♪」
「ああ、お帰り、恋」
家のドアを思いっきり開けたと思ったとたん、元気な声がリビングに飛び込んでくる。
輝く笑顔を見せながら入ってきたのは、俺の義理の妹の恋。
大学生とモデルを兼業しているが…俺にとっては『ちょっとやかましいけど可愛い妹』といったほうがいいだろうか。
「同じ国なのに、こっちは結構涼しいわね~」
「沖縄に比べりゃ当然だろ。どうだった?」
「うん、ばっちり。ロケやるならやっぱりあったかい海よね♪」
にっこり笑ってから恋が上着を脱ぎ出す。
…いくらなんでもノースリーブの服じゃ、上着着てても冷えるだろうが…どうやらお気に入りらしいのでほうっておく。
「はは、そうだな。そんなに上機嫌なら次の写真集も期待できるかな」
「お兄様の期待には背きませんよ~♪」
「お前の『お兄様』には裏がありそうで怖いよ」
恋の親友の藍ちゃんの『お兄様』ならいざ知らず、こっちのほうはあとで何をされるか分かったものじゃない。
そんな俺のため息交じりの言葉を、少し残念そうな顔で恋が受け流す。

「…天邪鬼なんだから。そういえば、橘せんぱ…じゃなかった。天音さんは?」
「悠姉さんのところで料理習ってる」
「篠宮先生? あの二人って、もう本当の姉妹?っていうくらい仲良いわよね~」
「まぁ、仲がいいのは助かるよ」
「やっぱり、どっちも大輔の幼馴染だからかしら? 本音を言うと、どっちをお嫁さんにするか結構迷ったんじゃない?」
「………あんまりそういうこと言うと俺も怒るぞ」
「ふふっ、顔赤くなってるわよ。大丈夫よ。大輔が天音さん一筋なのはよーく分かってるんだから」
「…………もういい…」
ウィンクしている恋が可愛いのはともかく、このネタでからかわれるのは、正直かなり疲れる。
少し前、俺や天音の両親たちといった身内に、天音との正式な婚約を報告してから、恋のそういうからかいがかなり増えた気がする。
何を思ってるのかは知らないが…。
俺の戸惑いをよそに、ソファ越しに体を乗り出してくる。
「ところで、大輔はソファに座り込んで何読んでるの?」
「ん? ああ、藍ちゃんから送られてきたんだ」
「藍から? んー、何々…これって経歴書じゃないの。それに絵の写真が何枚も…」
「ちょっと見てほしい、ってさ」
「絵描きさん?」
「多分な。まだ学生みたいだけど」
「へー…もしかして麻生大輔画伯のアシスタント候補、とか?」
「アシスタントなんて雇える身分じゃないって」
「謙遜しちゃって。で、どんな人なの。えっと……上倉…浩樹?」
というわけで、もうお分かりかとは思いますが、Canvas2のお話なのに、実は2のヒロインはほとんど出てこない予定です。ちなみに恋がメインのお話でもないのであしからず(笑)
時系列としては浩樹が撫子に赴任する半年前の秋ということになります。無論その年の春には浩樹にとっては厄介なあの一件があるわけで…。その辺までちゃんとお話に出来るかはわかりませんが、のんびりと書いていきたいと思います。なんとなくCanvas1.5くらいのつもりで(『なでしこ』ではないですが…)
(二)のメインは多分あの理事長先生です(^^)
by scluge
| 2007-09-10 16:46