2007年 11月 21日
夏色の少女 |
朝霧様のページですでに公開されていますが、ご許可を頂いたので、一枚だけ絵を加えてこちらでも全文掲載させて頂きます。たゆんたゆんな夏はいいですね~(^^)
【去年とは一味違う夏】
夏休み最後の部活、ということで軽めに終わった真っ昼間。
幼馴染で部活のマネージャーもやっているこいつが『プールに行こう!』と声をかけてきた。
まだ日中とはいえ、部活のあとだ。
面倒くさがって行こうとしない俺に、不満そうにすねた声を上げる。
「この夏の私の水着の見納めなんだからね」
「確かに今年はまだ見てないけど……毎年見ているような気もするが?」
「ふっふ~ん。今年はいつもとは違うんだよ~」
ちっちっち、という仕草で俺の発言をあっさりと否定してくれる。
「何がだよ」
「5センチ」
「は?」
「去年の夏からね、バストが5センチも増えたんだよ♪」
「なっ…」

思わず俺の視線が目の前の少女の特定の部分に行ってしまったことは否定しようが無い。
ニンマリとするこいつの笑顔。
激しく後悔するが、後の祭りだ。…俺の馬鹿。
「どうどう? 見たくない? 去年よりずいぶん成長しちゃったんだよ?」
いかにも嬉しそうに俺に迫ってくる。
その笑顔の眩しさたるや、夏の太陽も真っ青というところか。
「…降参」
「うん?」
「俺の負けです。行きます。一緒に行かせていただきます。ぜひとも水着姿を拝見させてください」
「なんかヤケクソになってない?」
「半分当たりだが、もう半分は本音だ」
こういったことでウソを言っても仕方が無い。
付き合いが長い分、すぐにばれるのがオチだ。
「うふふっ、楽しみにしててねっ♪」
短めのポニーテールをなびかせながら、俺の前でくるりと一回転。
ふわりとひるがえったチェックのスカートや、白いブラウスが眩しく映る。
「ほらほらっ、早くしないとわたしの水着が見られなくなっちゃうよ?」
そのままてってけと先を歩くあいつが振り向いて声をかけてくる。
「やれやれ…」
あいつに振り回されまくったこの夏が、やっぱり最後までそうなったことにため息を漏らす。
ただ、そう悪い気分ではないことも本当のことなのだが。
○
「ところで、プールっていうのは、町内にひとつだけのあのプールのことか」
どこの町にもプールのひとつやふたつはあるだろう、もちろん俺たちの住んでいるこの町にもある。
ただし、この町のプールはかなり立地的によろしくなく、行くのが大変なのだ。
「今からだと、着いたころには3時は過ぎてるから、あまり泳いでる時間なさそうだが」
と言ったら、前を歩くあいつが振り向いて、ニンマリと笑った。
「だ~いじょうぶっ。だって、行くのはすぐそこだよ?」
指をさす方向を見ると、そこにあるのはうちの学園のプールだ。
「水泳部は、今日は部活お休みなんだって。だから、先生に頼んだらオッケーもらえたんだ~」
いいのか、おい。おおらかな学園だとは思っていたけど、自由すぎるのも問題ではなかろうか。
「ほら、更衣室と入り口のカギもばっちり。それから、一緒に行くのがキミだって言ったら、こんなのもくれたよ」
スカートのポケットから、鍵束と小さな箱を取り出して、箱のほうを俺に放り投げた。
「ナイスキャッチ☆」
「おう、って、これは……」
その箱には、『あかるい家族計画』と言う文字が、やたらPOPな書体で書かれていた。
だから、おおらかすぎやしないかっ!?
「もう、困っちゃうよね~、先生にも。そんなの必要ないのに~」
「あ、ああ。そうだよな」
必要ないのは、俺が安全だと思われているからだろうか。それはそれで嬉しいんだが、少しは心配、というか意識してもらえると助かるんだが。俺だって、ほら、オトコだしさ。
「だって……今日は『オッケー』な日だもん♪」
……なんですと?
そんなわけで、俺はプールにいる。正確にはプールサイドに。とっくに着替えは済ませ、後はあいつが出てくるのを待つだけだ。
先にプールに入っててもいいんだが、なんとなく待たなきゃいけないような気が。
誰もいない学園のプールは、広々としていて、静かで、不思議な空間だ。
空は青く、ところどころ白い雲が浮かんでいて、裏山の森からセミの声と、少し離れたグラウンドからは運動系の部活の声が聞こえてくる。
あまりにものどかなので、ごろりと横になる。
あー、早く来てくれないといろいろ想像してしまいそうなんだが。
だって、5センチって。
去年どれくらいだったかなんて、数字聞いたわけじゃないからわからないが、少なくともぺたんこではなかった。
ということは、だ。プラス5センチというのは、かなりの成長率であるわけで、見たいと思って
しまった俺は正常……だよな?
というとこまで思考が旅立ったところで、天空から水が降ってきた。
「うわあっ」
即座に跳ね起きると、あいつがプール脇に座っていて、俺に向かって水をかけていた。
「ふっふっふ。えっちなこと考えてる頭を冷やしてあげるよ。それそれっ」
くっ、先手を取られた。
俺も負けじと水をかけ返す。
「そりゃっ」
ばしゃっ。
「ていていっ」
ぱしゃぱしゃっ。
「どりゃっ」
ばしゃあっ。
「きゃあっ☆」
お互い、プールに入る前からびしょぬれになっていた。
あいつは、Tシャツがぐっしょりで、中の水着が透けるほどだ。……え?
「あ、なんか視線を感じる。えっちー」
と言って、胸元を隠すあいつ。
「あの、質問してもいいか?」
「いいよ♪」
「どうして、水着の上にTシャツを着ているのでしょうか?」
なんで丁寧語になっているんだ、俺は。
そんな俺がおかしいのか、あいつはにこやかに言い放った。
「だって、そのほうがドキドキするでしょ♪」
「なっ…」
思わず俺の視線が目の前の少女の特定の部分に行ってしまったことは否定しようが無い。
ニンマリとするこいつの笑顔。
激しく後悔するが、後の祭りだ。…俺の馬鹿。
「えへへっ。脱いでほしかったら、わたしをつかまえてみなさいなっ」
プールに入り、手を叩くあいつ。
ようし、そっちがその気なら、絶対に拝ませてもらうからな、水着姿。
俺はやっぱりヤケクソになっている。でも、悪い気分じゃないのも事実で。
息をいっぱいに吸い込んで、プールに飛び込んだ。
○
勢いよくプールに飛び込むと、水しぶきも盛大に上がった。
うあ、思いっきり腹打った……。
「おーい、だーいじょーぶー?」
腹を押さえて苦しむ俺に、楽しげな声と水がかけられる。うおっ、目と鼻と口に水がっ。
「絶対にっ、それ、脱がしてやるからな」
「うわぁ、襲われちゃう♪」
だから、なんであいつは楽しげなんだろうか?
そんなことを思いながら、俺はあいつに向かって泳ぎ始めた。
ざぶざぶと水をかきながら、あいつに向かって進む。でも、どういうわけか、あいつは少しも
動こうとしない。
おかしいなと思いつつ、あいつの手を掴むことに成功した、あっさりと。あ、あれ?
「おめでとう~♪ ぱちぱちぱち☆」
にこにこと手を叩くあいつ。
「どうして逃げなかったんだ」
当然の俺の疑問に、あいつは目を伏せて呟いた。
「だって……、本気を出したキミには勝てないなって思ったから。それに……」
「それに?」
俺の目をみつめるあいつ。
「キミになら、襲われちゃっても……、いいかなって」
「ばっ、バカなこと言うなよな……」
いつもの冗談だと思いつつも、目をそらしてしまう。
その瞬間、世界が回転した。
しこたま水を飲んでしまい、げほげほとむせる俺を指差しながら、けたけたとあいつは
笑っていた。
俺があいつから目をそらした瞬間に、あいつに足をかけられ、転ばされたのだ。
不意をつかれたので思いっきり沈んでしまい、かなり水を飲んでしまった。くそ~。
「まだまだだね~」
いつの間にやらプールサイドに上がっているあいつ。おいっちにー、などと言いながら
ラジオ体操をしている。しかも、いつの間にかTシャツは脱いでいる。
「結果はどうあれ、つかまっちゃったもん。約束は守らなきゃだよ♪」
変なところで律儀なあいつだった。
「どうして今さらラジオ体操なんだ?」
と聞くと、キミもやんなよと言うので、俺もプールから上がった。
「だってさ、水に入る前に準備体操するのはお約束でしょ?」
「お約束というよりは一般常識という気がするが」
先ほど、準備体操もしないでプールに飛び込んでいたことは、この際スルー。
いつも突飛な言動ばかりだとばかり思われているが、実は一番役に立つことを言ってたり
するんだよなあ……。
お互い向き合ってラジオ体操というのも、はたから見たら妙な光景だろうが、ここにはふたりきりなので気にしない。
ぴょんぴょんと飛んでいると、あいつの特定の部位が気になってしまう。
むむっ、確かにこの揺れ具合なら、5センチも頷ける……。
「えへへ、どう? おっきくなったでしょ♪」

「ぶっ」
しまった、気付かれていた!
そりゃ、目の前であれを見ていたら気付かれもするだろ、俺の馬鹿……。
「…………、…………」
「何よー、黙り込んじゃって。疑ってるの? 別に何も仕込んでないんだから。……何なら、
触ってみる?」
…………。
夏休み最後の部活の日。去年とは一味違う夏の日。
それは、俺たちにとって少しだけ特別で、でもいつもよりもいつもどおりな日。
「ほらほらっ、早くしないと先生たちにあることないこと心配されちゃうよっ♪」
楽しげなあいつの声に引き寄せられるように、俺は歩き出した。
結局使わなかったこの箱は、ちゃんと返しておかなきゃならないからな。
翌日、これが原因でまた先生にからかわれることになるのだが、この時の舞い上がっていた
俺には気付けなかった。
だって、美咲のあの感触が、俺の頭の中を埋め尽くしていたのだから。
おわり♪
『美咲のあの感触が』…という最後の一文で色々と考えてしまうのです(笑) それにしても舞阪美咲は本当に夏が似合うキャラクターなのですが、このポップなノリはどの季節にも合いそうな気もします。冬に展開があるのかどうかは分かりませんが、なんか楽しみになってしまいますね。
○
別件で色々水面下で動いてはいるのですが、公開できるものとそうでないものがあるので非常に困ります。そんなことをやっていたら夕方にパタリ、と寝てしまって、起きたら午前3時…。起きて外が真っ暗だと状況の把握に困りますね~。特に目覚まし時計が電池切れのときは(わは
○
やまぐう様のSS「ふくらみとひとつに溶けて」(18禁)
…やっぱりこういう自分の絵が、人様の目に触れるのは色々な意味で怖いですね~。何でこんなことになってしまったんだろう(笑)
○
で、私信~。
朝霧様>
美咲の文章の掲載ありがとうございました。確か、はてなでも画像を載せることは出来た…と思うんですが、いかんせん最後にはてなダイアリーに触れたのが2年前(^^; 確か、一回はてなに画像をUPしてからそこから引っ張り出す形だったような。
>それは早坂さん次第なのでしょうか
保険の先生が出てきたらどうしたらいいんだろう、と思いつつ(^^;
本当に先が分からないので、書いてて難しいんだろうなー、と思いつつブタベは楽しんでたり。
笑顔の二人も描けるような展開になってほしいですね。
>「ちょいあ」は……名前だけ知ってたり
色々と難があるソフトではありますが、キャラクターやストーリー、絵は今考えてもいいものだったので、機会があればプレイするのも良いかもしれません。とりあえず睦月姉妹だけでも(笑) ブタベにツインテールへの道を踏み出させた双子なのです。
冬になってきたので、そろそろ冬用の帽子とかコートとか、マフラー・手袋をした女の子も描きたいなー、とか思ったり。
>「ふふっ、こういうのが好きなんでしょ?」
ふふふ…その真相は近いうちに判明するでしょー…なんて思わせぶりなことを言ってみたり(笑)
というか、やっぱりこういう台詞が似合ってしまう絵なことにいまさら気づくへたれ絵描きブタベ。や、大マジで何も考えずに描いてたんで…。えをかいたあとによそうがいのことになるのはいつものことですが(^^;
ふみぃ様>
タートルネックの黒インナーにたゆんたゆんはブタベの基本なんで(^^; …基本そのものが間違っているような気がしないでもないですが。
早坂様>
>そうですね・・・絵師さんにお願いするしかないですよね
えー(笑)
>2枚目と3枚目の間に攻守交代があったに違いないですね
上にもありますが、真相は近いうちに(笑)
それにしても、なんでこんな展開になってしまったんだろう…。
>夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 3.0「そして」
幕間みたいな感じですね。どんどん壊れていくヒロイン二人の裏側で悩む人々…とても優しくて、温かいはずなのに、それこそ菜月の言うように薄氷の上を歩いているようで、なかなかもどかしいです。
一息ついて、また本編に…うーんどういう展開になるのか。
私信の私信。
さすがにあの時は、途中で自分の覚悟の甘さを痛感しました(笑)
【去年とは一味違う夏】
夏休み最後の部活、ということで軽めに終わった真っ昼間。
幼馴染で部活のマネージャーもやっているこいつが『プールに行こう!』と声をかけてきた。
まだ日中とはいえ、部活のあとだ。
面倒くさがって行こうとしない俺に、不満そうにすねた声を上げる。
「この夏の私の水着の見納めなんだからね」
「確かに今年はまだ見てないけど……毎年見ているような気もするが?」
「ふっふ~ん。今年はいつもとは違うんだよ~」
ちっちっち、という仕草で俺の発言をあっさりと否定してくれる。
「何がだよ」
「5センチ」
「は?」
「去年の夏からね、バストが5センチも増えたんだよ♪」
「なっ…」

思わず俺の視線が目の前の少女の特定の部分に行ってしまったことは否定しようが無い。
ニンマリとするこいつの笑顔。
激しく後悔するが、後の祭りだ。…俺の馬鹿。
「どうどう? 見たくない? 去年よりずいぶん成長しちゃったんだよ?」
いかにも嬉しそうに俺に迫ってくる。
その笑顔の眩しさたるや、夏の太陽も真っ青というところか。
「…降参」
「うん?」
「俺の負けです。行きます。一緒に行かせていただきます。ぜひとも水着姿を拝見させてください」
「なんかヤケクソになってない?」
「半分当たりだが、もう半分は本音だ」
こういったことでウソを言っても仕方が無い。
付き合いが長い分、すぐにばれるのがオチだ。
「うふふっ、楽しみにしててねっ♪」
短めのポニーテールをなびかせながら、俺の前でくるりと一回転。
ふわりとひるがえったチェックのスカートや、白いブラウスが眩しく映る。
「ほらほらっ、早くしないとわたしの水着が見られなくなっちゃうよ?」
そのままてってけと先を歩くあいつが振り向いて声をかけてくる。
「やれやれ…」
あいつに振り回されまくったこの夏が、やっぱり最後までそうなったことにため息を漏らす。
ただ、そう悪い気分ではないことも本当のことなのだが。
「ところで、プールっていうのは、町内にひとつだけのあのプールのことか」
どこの町にもプールのひとつやふたつはあるだろう、もちろん俺たちの住んでいるこの町にもある。
ただし、この町のプールはかなり立地的によろしくなく、行くのが大変なのだ。
「今からだと、着いたころには3時は過ぎてるから、あまり泳いでる時間なさそうだが」
と言ったら、前を歩くあいつが振り向いて、ニンマリと笑った。
「だ~いじょうぶっ。だって、行くのはすぐそこだよ?」
指をさす方向を見ると、そこにあるのはうちの学園のプールだ。
「水泳部は、今日は部活お休みなんだって。だから、先生に頼んだらオッケーもらえたんだ~」
いいのか、おい。おおらかな学園だとは思っていたけど、自由すぎるのも問題ではなかろうか。
「ほら、更衣室と入り口のカギもばっちり。それから、一緒に行くのがキミだって言ったら、こんなのもくれたよ」
スカートのポケットから、鍵束と小さな箱を取り出して、箱のほうを俺に放り投げた。
「ナイスキャッチ☆」
「おう、って、これは……」
その箱には、『あかるい家族計画』と言う文字が、やたらPOPな書体で書かれていた。
だから、おおらかすぎやしないかっ!?
「もう、困っちゃうよね~、先生にも。そんなの必要ないのに~」
「あ、ああ。そうだよな」
必要ないのは、俺が安全だと思われているからだろうか。それはそれで嬉しいんだが、少しは心配、というか意識してもらえると助かるんだが。俺だって、ほら、オトコだしさ。
「だって……今日は『オッケー』な日だもん♪」
……なんですと?
そんなわけで、俺はプールにいる。正確にはプールサイドに。とっくに着替えは済ませ、後はあいつが出てくるのを待つだけだ。
先にプールに入っててもいいんだが、なんとなく待たなきゃいけないような気が。
誰もいない学園のプールは、広々としていて、静かで、不思議な空間だ。
空は青く、ところどころ白い雲が浮かんでいて、裏山の森からセミの声と、少し離れたグラウンドからは運動系の部活の声が聞こえてくる。
あまりにものどかなので、ごろりと横になる。
あー、早く来てくれないといろいろ想像してしまいそうなんだが。
だって、5センチって。
去年どれくらいだったかなんて、数字聞いたわけじゃないからわからないが、少なくともぺたんこではなかった。
ということは、だ。プラス5センチというのは、かなりの成長率であるわけで、見たいと思って
しまった俺は正常……だよな?
というとこまで思考が旅立ったところで、天空から水が降ってきた。
「うわあっ」
即座に跳ね起きると、あいつがプール脇に座っていて、俺に向かって水をかけていた。
「ふっふっふ。えっちなこと考えてる頭を冷やしてあげるよ。それそれっ」
くっ、先手を取られた。
俺も負けじと水をかけ返す。
「そりゃっ」
ばしゃっ。
「ていていっ」
ぱしゃぱしゃっ。
「どりゃっ」
ばしゃあっ。
「きゃあっ☆」
お互い、プールに入る前からびしょぬれになっていた。
あいつは、Tシャツがぐっしょりで、中の水着が透けるほどだ。……え?
「あ、なんか視線を感じる。えっちー」
と言って、胸元を隠すあいつ。
「あの、質問してもいいか?」
「いいよ♪」
「どうして、水着の上にTシャツを着ているのでしょうか?」
なんで丁寧語になっているんだ、俺は。
そんな俺がおかしいのか、あいつはにこやかに言い放った。
「だって、そのほうがドキドキするでしょ♪」
「なっ…」
思わず俺の視線が目の前の少女の特定の部分に行ってしまったことは否定しようが無い。
ニンマリとするこいつの笑顔。
激しく後悔するが、後の祭りだ。…俺の馬鹿。
「えへへっ。脱いでほしかったら、わたしをつかまえてみなさいなっ」
プールに入り、手を叩くあいつ。
ようし、そっちがその気なら、絶対に拝ませてもらうからな、水着姿。
俺はやっぱりヤケクソになっている。でも、悪い気分じゃないのも事実で。
息をいっぱいに吸い込んで、プールに飛び込んだ。
勢いよくプールに飛び込むと、水しぶきも盛大に上がった。
うあ、思いっきり腹打った……。
「おーい、だーいじょーぶー?」
腹を押さえて苦しむ俺に、楽しげな声と水がかけられる。うおっ、目と鼻と口に水がっ。
「絶対にっ、それ、脱がしてやるからな」
「うわぁ、襲われちゃう♪」
だから、なんであいつは楽しげなんだろうか?
そんなことを思いながら、俺はあいつに向かって泳ぎ始めた。
ざぶざぶと水をかきながら、あいつに向かって進む。でも、どういうわけか、あいつは少しも
動こうとしない。
おかしいなと思いつつ、あいつの手を掴むことに成功した、あっさりと。あ、あれ?
「おめでとう~♪ ぱちぱちぱち☆」
にこにこと手を叩くあいつ。
「どうして逃げなかったんだ」
当然の俺の疑問に、あいつは目を伏せて呟いた。
「だって……、本気を出したキミには勝てないなって思ったから。それに……」
「それに?」
俺の目をみつめるあいつ。
「キミになら、襲われちゃっても……、いいかなって」
「ばっ、バカなこと言うなよな……」
いつもの冗談だと思いつつも、目をそらしてしまう。
その瞬間、世界が回転した。
しこたま水を飲んでしまい、げほげほとむせる俺を指差しながら、けたけたとあいつは
笑っていた。
俺があいつから目をそらした瞬間に、あいつに足をかけられ、転ばされたのだ。
不意をつかれたので思いっきり沈んでしまい、かなり水を飲んでしまった。くそ~。
「まだまだだね~」
いつの間にやらプールサイドに上がっているあいつ。おいっちにー、などと言いながら
ラジオ体操をしている。しかも、いつの間にかTシャツは脱いでいる。
「結果はどうあれ、つかまっちゃったもん。約束は守らなきゃだよ♪」
変なところで律儀なあいつだった。
「どうして今さらラジオ体操なんだ?」
と聞くと、キミもやんなよと言うので、俺もプールから上がった。
「だってさ、水に入る前に準備体操するのはお約束でしょ?」
「お約束というよりは一般常識という気がするが」
先ほど、準備体操もしないでプールに飛び込んでいたことは、この際スルー。
いつも突飛な言動ばかりだとばかり思われているが、実は一番役に立つことを言ってたり
するんだよなあ……。
お互い向き合ってラジオ体操というのも、はたから見たら妙な光景だろうが、ここにはふたりきりなので気にしない。
ぴょんぴょんと飛んでいると、あいつの特定の部位が気になってしまう。
むむっ、確かにこの揺れ具合なら、5センチも頷ける……。
「えへへ、どう? おっきくなったでしょ♪」

「ぶっ」
しまった、気付かれていた!
そりゃ、目の前であれを見ていたら気付かれもするだろ、俺の馬鹿……。
「…………、…………」
「何よー、黙り込んじゃって。疑ってるの? 別に何も仕込んでないんだから。……何なら、
触ってみる?」
…………。
夏休み最後の部活の日。去年とは一味違う夏の日。
それは、俺たちにとって少しだけ特別で、でもいつもよりもいつもどおりな日。
「ほらほらっ、早くしないと先生たちにあることないこと心配されちゃうよっ♪」
楽しげなあいつの声に引き寄せられるように、俺は歩き出した。
結局使わなかったこの箱は、ちゃんと返しておかなきゃならないからな。
翌日、これが原因でまた先生にからかわれることになるのだが、この時の舞い上がっていた
俺には気付けなかった。
だって、美咲のあの感触が、俺の頭の中を埋め尽くしていたのだから。
おわり♪
『美咲のあの感触が』…という最後の一文で色々と考えてしまうのです(笑) それにしても舞阪美咲は本当に夏が似合うキャラクターなのですが、このポップなノリはどの季節にも合いそうな気もします。冬に展開があるのかどうかは分かりませんが、なんか楽しみになってしまいますね。
○
別件で色々水面下で動いてはいるのですが、公開できるものとそうでないものがあるので非常に困ります。そんなことをやっていたら夕方にパタリ、と寝てしまって、起きたら午前3時…。起きて外が真っ暗だと状況の把握に困りますね~。特に目覚まし時計が電池切れのときは(わは
○
やまぐう様のSS「ふくらみとひとつに溶けて」(18禁)
…やっぱりこういう自分の絵が、人様の目に触れるのは色々な意味で怖いですね~。何でこんなことになってしまったんだろう(笑)
○
で、私信~。
朝霧様>
美咲の文章の掲載ありがとうございました。確か、はてなでも画像を載せることは出来た…と思うんですが、いかんせん最後にはてなダイアリーに触れたのが2年前(^^; 確か、一回はてなに画像をUPしてからそこから引っ張り出す形だったような。
>それは早坂さん次第なのでしょうか
保険の先生が出てきたらどうしたらいいんだろう、と思いつつ(^^;
本当に先が分からないので、書いてて難しいんだろうなー、と思いつつブタベは楽しんでたり。
笑顔の二人も描けるような展開になってほしいですね。
>「ちょいあ」は……名前だけ知ってたり
色々と難があるソフトではありますが、キャラクターやストーリー、絵は今考えてもいいものだったので、機会があればプレイするのも良いかもしれません。とりあえず睦月姉妹だけでも(笑) ブタベにツインテールへの道を踏み出させた双子なのです。
冬になってきたので、そろそろ冬用の帽子とかコートとか、マフラー・手袋をした女の子も描きたいなー、とか思ったり。
>「ふふっ、こういうのが好きなんでしょ?」
ふふふ…その真相は近いうちに判明するでしょー…なんて思わせぶりなことを言ってみたり(笑)
というか、やっぱりこういう台詞が似合ってしまう絵なことにいまさら気づくへたれ絵描きブタベ。や、大マジで何も考えずに描いてたんで…。えをかいたあとによそうがいのことになるのはいつものことですが(^^;
ふみぃ様>
タートルネックの黒インナーにたゆんたゆんはブタベの基本なんで(^^; …基本そのものが間違っているような気がしないでもないですが。
早坂様>
>そうですね・・・絵師さんにお願いするしかないですよね
えー(笑)
>2枚目と3枚目の間に攻守交代があったに違いないですね
上にもありますが、真相は近いうちに(笑)
それにしても、なんでこんな展開になってしまったんだろう…。
>夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 3.0「そして」
幕間みたいな感じですね。どんどん壊れていくヒロイン二人の裏側で悩む人々…とても優しくて、温かいはずなのに、それこそ菜月の言うように薄氷の上を歩いているようで、なかなかもどかしいです。
一息ついて、また本編に…うーんどういう展開になるのか。
私信の私信。
さすがにあの時は、途中で自分の覚悟の甘さを痛感しました(笑)
by scluge
| 2007-11-21 04:31
| 絵