2007年 12月 10日
とどまることを知らず? |
相川紗奈というキャラクターは、偶然から始まったものなのですが、今となってはブタベの絵に欠かせないものになってしまってます。水面下のことはともかく、今回はやまぐう様に頂いた“健全な文章”の外伝をお送りいたします(笑)
文章を頂いてから絵を描いたのですが、たった一つのオプションで結構印象が変わるんだなぁ、となかなかに面白かったです。それではお楽しみくださいませませ♪
【やまぐう様オリジナルストーリー 『紗奈』外伝 ―彼女と映画を―】
雲ひとつない空から降ってくる冬の陽光は明るいものの暖かさを運んでくるほどのものじゃない。だからといって、ないより遥かにマシだから、待ち合わせ場所の日陰から出て、すくめていた肩の力を抜く。
澄んだ空を見ているうちに、たったったと駆けてくる音と、白い息がひろがるのが見えた。ポニーテールにくくった黒髪が左右に揺れているのもわかる。
紗奈が真正面に走りこんできて、深呼吸数回で息を整えた。俺の顔まで白さがひろがる。
「ごめんね。待った?」
「と謝られるほどには待ってない。ほら」
すっと手を差し出すと、紗奈の両手がぴたっと挟んだ。
「そうなんだ。よかった」
全然冷えていない手ににっこり。挟んだ手をたぐり寄せ、腕を胸もとに抱えこんで、さらに大きな笑み。

冬になって厚手の服を着ていても、ふくらみのボリュームと柔らかさが伝わってくる。俺の胸はどきどきと、内から暖かくなってくる。
紗奈がこうして腕を抱えてくれるのは、俺の好みを知っているから。大きい胸が大好きだから、こうして当ててくれる。
細やかというより大胆な気遣いが嬉しい。あまりに心地いい感触に脂下がらないよう気を引き締めなければいけないのは、贅沢な悩みだ。
オシャレな街の中心へ向けて、足取りは軽く。
「今日は映画館だよね。ホテルじゃなくて」
「ホテルのほうがいいなら、そっちでもいいよ」
「ううん。たまには映画がいい」
まるで会うとほとんどホテルに行っているみたいな口振りに、苦笑しかける。そんなに行ったら、金欠に喘いでしまうって。
苦笑が表まで出なかったのは、ホテルはともかくデートでそういうことをする割合を考えたら「ほとんど」という形容詞が当て嵌まりそうになったから。
紗奈は紗奈で、なにかを計算しているような顔つき。
「……映画館で、しちゃおっか」
「おい」
にこにこしながらとんでもないことを言い出す紗奈のおでこをちょこんとつつく。
「へへ。でも、興味あるでしょ」
「興味がないとは言わないけど、紗奈を危険に晒すようなことはしないぞ」
「ありがと」
お礼なのか、ぎゅっと強く抱えてくれる。だめだ。どうしても顔がほころんでしまう。
スキップしそうなほど軽やかに歩いていたら、すぐに、いくつも映画館の入ったビルの前へ着いた。
特になにを見ようと決めてなかったから、窓口に並ぶ前にさあどれにしようかと相談開始。
カップルなら恋愛ものが定番だろうが、俺と紗奈は別にそういうこだわりもなく、これが良さそうという冒険活劇ものにした。
…
……
「最後がなあ……」
「不満だったの?」
見終えて、ファーストフードの店でおしゃべりタイム。
俺も紗奈も映画に合格点をつけてから、ちょっと引っかかったところを振りかえっている。
「あれで終わり?、って気にならなかったのか、紗奈は」
「あれ以上説明しなくてもいいと思ったよ。いろいろ想像できるし」
「じゃあ、主役の男はあれからどうなったと思う?」
紗奈の想像とやらを聞かせてもらう。
「なるほど。そうなるのか」
「私のなかでは、ね」

得意気に、ちゅうとストローを吸った紗奈が、目を大きくし、細め、元に戻す。
「そうだ。もうこれはいいやっと」
眼鏡をはずして、セカンドバッグから取り出したケースに仕舞う。
暗くなって映画がはじまったときにかけて、そのままになっていたのを知っていたが俺は黙っていた。なかなか見ることのできない紗奈をさりげなく観賞していた。
「いつも思うけど、眼鏡なくて普段は平気なのか?」
「平気だよ。映画の字幕は、しっかり読みたいからかけるの」
付き合いは長いけれど、紗奈が眼鏡をかけているところを見たのは数えるほどしかない。やっぱり前に字幕つきの映画を見たときと、見晴らしの良い場所で俺の指差した遠くを見ようとしたときくらいなもの。
紗奈が眼鏡をかけると、知的に見えると同時に年齢が下がって見えるので、効果が相殺されるのが面白い。素顔とは違う可愛らしさがあるので、かける機会を増やしてほしいと思いつつ。
「眼鏡、とっても似合うよ」
「そう?」
「うん。だからここでもかけてくれ」
「それはイヤ。疲れるから」
たいていのお願いは聞いてくれるが、これが眼鏡になると固辞されてしまう。いくら俺が誉めても、自分に似合ってないと紗奈は思っているのだろうか。
「じゃあ、伊達眼鏡でどう?」
指で輪を作って覗きこみながらの提案に、紗奈は宙をにらんで少し考えこんでから、
「プレゼントしてくれる?」
「うん」
「検討してみるよ」
やっぱり断わられてしまった。有無を言わざず店に連れていって選んでしまうくらいしたほうが良さそうだ。
とりあえず、一味違う紗奈を見たくなったときにはまた字幕ありの映画に誘おうと心に決め、あとはたわいもない話でいつものように楽しく過ごす。眼鏡をかけようとはずそうと、今こうしてここにいる紗奈が俺にとって最高の彼女だから。
外伝のタイトルはブタベが付けさせていただきました。タイトルに『眼鏡』を入れてしまうとネタが分かってしまうので簡単なもので。大胆な彼女、頑固な彼女、色々な表情が見られて嬉しい文章でした。二人が観た映画はどんな内容だったんでしょうねー。
今回、紗奈が着ているのは制服とは違うタートルネックのセーターなのですが、装飾をする余裕が無かったので、似たようなものになってしまいました(^^;
さて、次があったらどんな表情を見させてくれるんだろう、と楽しみにしつつ(笑)
○
そういえば、2枚目の絵で紗奈が持っているのは日本最大の某ハンバーガーチェーンのアレっぽいものなのですが(笑)、先日秋葉原行ったときに、新しいソフマップの所のマクドナルドで価格表を見たらとんでもない価格になっていてびびりました。都内は人件費が高いとはいえ…もうファストフードの価格ではないような。
普通にサイゼリア辺りに行ったほうがやすく食べられそうな感じですねー(ガスト・ジョイフルも価格帯を上げ始めているのがなんとも厄介な時代です)。
文章を頂いてから絵を描いたのですが、たった一つのオプションで結構印象が変わるんだなぁ、となかなかに面白かったです。それではお楽しみくださいませませ♪
【やまぐう様オリジナルストーリー 『紗奈』外伝 ―彼女と映画を―】
雲ひとつない空から降ってくる冬の陽光は明るいものの暖かさを運んでくるほどのものじゃない。だからといって、ないより遥かにマシだから、待ち合わせ場所の日陰から出て、すくめていた肩の力を抜く。
澄んだ空を見ているうちに、たったったと駆けてくる音と、白い息がひろがるのが見えた。ポニーテールにくくった黒髪が左右に揺れているのもわかる。
紗奈が真正面に走りこんできて、深呼吸数回で息を整えた。俺の顔まで白さがひろがる。
「ごめんね。待った?」
「と謝られるほどには待ってない。ほら」
すっと手を差し出すと、紗奈の両手がぴたっと挟んだ。
「そうなんだ。よかった」
全然冷えていない手ににっこり。挟んだ手をたぐり寄せ、腕を胸もとに抱えこんで、さらに大きな笑み。

冬になって厚手の服を着ていても、ふくらみのボリュームと柔らかさが伝わってくる。俺の胸はどきどきと、内から暖かくなってくる。
紗奈がこうして腕を抱えてくれるのは、俺の好みを知っているから。大きい胸が大好きだから、こうして当ててくれる。
細やかというより大胆な気遣いが嬉しい。あまりに心地いい感触に脂下がらないよう気を引き締めなければいけないのは、贅沢な悩みだ。
オシャレな街の中心へ向けて、足取りは軽く。
「今日は映画館だよね。ホテルじゃなくて」
「ホテルのほうがいいなら、そっちでもいいよ」
「ううん。たまには映画がいい」
まるで会うとほとんどホテルに行っているみたいな口振りに、苦笑しかける。そんなに行ったら、金欠に喘いでしまうって。
苦笑が表まで出なかったのは、ホテルはともかくデートでそういうことをする割合を考えたら「ほとんど」という形容詞が当て嵌まりそうになったから。
紗奈は紗奈で、なにかを計算しているような顔つき。
「……映画館で、しちゃおっか」
「おい」
にこにこしながらとんでもないことを言い出す紗奈のおでこをちょこんとつつく。
「へへ。でも、興味あるでしょ」
「興味がないとは言わないけど、紗奈を危険に晒すようなことはしないぞ」
「ありがと」
お礼なのか、ぎゅっと強く抱えてくれる。だめだ。どうしても顔がほころんでしまう。
スキップしそうなほど軽やかに歩いていたら、すぐに、いくつも映画館の入ったビルの前へ着いた。
特になにを見ようと決めてなかったから、窓口に並ぶ前にさあどれにしようかと相談開始。
カップルなら恋愛ものが定番だろうが、俺と紗奈は別にそういうこだわりもなく、これが良さそうという冒険活劇ものにした。
…
……
「最後がなあ……」
「不満だったの?」
見終えて、ファーストフードの店でおしゃべりタイム。
俺も紗奈も映画に合格点をつけてから、ちょっと引っかかったところを振りかえっている。
「あれで終わり?、って気にならなかったのか、紗奈は」
「あれ以上説明しなくてもいいと思ったよ。いろいろ想像できるし」
「じゃあ、主役の男はあれからどうなったと思う?」
紗奈の想像とやらを聞かせてもらう。
「なるほど。そうなるのか」
「私のなかでは、ね」

得意気に、ちゅうとストローを吸った紗奈が、目を大きくし、細め、元に戻す。
「そうだ。もうこれはいいやっと」
眼鏡をはずして、セカンドバッグから取り出したケースに仕舞う。
暗くなって映画がはじまったときにかけて、そのままになっていたのを知っていたが俺は黙っていた。なかなか見ることのできない紗奈をさりげなく観賞していた。
「いつも思うけど、眼鏡なくて普段は平気なのか?」
「平気だよ。映画の字幕は、しっかり読みたいからかけるの」
付き合いは長いけれど、紗奈が眼鏡をかけているところを見たのは数えるほどしかない。やっぱり前に字幕つきの映画を見たときと、見晴らしの良い場所で俺の指差した遠くを見ようとしたときくらいなもの。
紗奈が眼鏡をかけると、知的に見えると同時に年齢が下がって見えるので、効果が相殺されるのが面白い。素顔とは違う可愛らしさがあるので、かける機会を増やしてほしいと思いつつ。
「眼鏡、とっても似合うよ」
「そう?」
「うん。だからここでもかけてくれ」
「それはイヤ。疲れるから」
たいていのお願いは聞いてくれるが、これが眼鏡になると固辞されてしまう。いくら俺が誉めても、自分に似合ってないと紗奈は思っているのだろうか。
「じゃあ、伊達眼鏡でどう?」
指で輪を作って覗きこみながらの提案に、紗奈は宙をにらんで少し考えこんでから、
「プレゼントしてくれる?」
「うん」
「検討してみるよ」
やっぱり断わられてしまった。有無を言わざず店に連れていって選んでしまうくらいしたほうが良さそうだ。
とりあえず、一味違う紗奈を見たくなったときにはまた字幕ありの映画に誘おうと心に決め、あとはたわいもない話でいつものように楽しく過ごす。眼鏡をかけようとはずそうと、今こうしてここにいる紗奈が俺にとって最高の彼女だから。
外伝のタイトルはブタベが付けさせていただきました。タイトルに『眼鏡』を入れてしまうとネタが分かってしまうので簡単なもので。大胆な彼女、頑固な彼女、色々な表情が見られて嬉しい文章でした。二人が観た映画はどんな内容だったんでしょうねー。
今回、紗奈が着ているのは制服とは違うタートルネックのセーターなのですが、装飾をする余裕が無かったので、似たようなものになってしまいました(^^;
さて、次があったらどんな表情を見させてくれるんだろう、と楽しみにしつつ(笑)
○
そういえば、2枚目の絵で紗奈が持っているのは日本最大の某ハンバーガーチェーンのアレっぽいものなのですが(笑)、先日秋葉原行ったときに、新しいソフマップの所のマクドナルドで価格表を見たらとんでもない価格になっていてびびりました。都内は人件費が高いとはいえ…もうファストフードの価格ではないような。
普通にサイゼリア辺りに行ったほうがやすく食べられそうな感じですねー(ガスト・ジョイフルも価格帯を上げ始めているのがなんとも厄介な時代です)。
by scluge
| 2007-12-10 19:29
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