2008年 01月 17日
リストランテ白鳳寮? |
以前、キリンシティ・かなでを描いた後、やまぐう様から今回のSSを頂き、それに合わせるつもりで描いたのが、先日のアンミラ陽菜になります。というわけで、やまぐう様の許可をいただきましたので、今回掲載いたします。
普段のお茶会とはちょっとだけ違う雰囲気の、孝平の部屋でのどたばたをお楽しみください(^^) SSタイトルはブタベが付けさせていただきました。さて、孝平はどっちをとるのでしょうか?
“Fortune Arterial ShortStory 【どっちが好き?】 by やまぐう様”
『へっへっへー。こーへー、今から行くからねー』
携帯から飛び出てきたきんきん声に押されるように、孝平は耳を離した。
「ようやく、来るってか」
大きな声は、あぐらをかいてくつろいでいる司にも届いていた。
通話を切った孝平は、友の前で同じくあぐらに。
「ああ。今日はずいぶん遅い――」
「じゃーん。おまたせ」
「こ、こんばんは」
電話から一分もしないうちに悠木姉妹が颯爽と、窓からやってきた。
孝平の部屋に来るのにはそのルートもあるから、それは驚くほどのことではないのだが、窓からなかへ入ってきたふたりの姿を見た男子生徒二名は瞬時、度肝を抜かれた。
「か、かなでさん。その格好は?」
「ふっふっふ。溜まっている男子諸君に、プレゼントだよーん」

手を伸ばしてポーズを決めているかなでが着ているのは、私服でも学院の制服でもない。白いシャツに赤いスカーフがまず目を引き、シャツと真っ赤なスカートはたっぷりとフリルに飾られた、なんとも派手な制服だ。

陽菜もまた、かなでとは違う、レストランっぽい制服をまとっている。フリルこそないが、シャツの前合わせがずいぶんと目立つ、姉に負けないきらびやかなもの。
「これねー、ビアレストランの制服なんだよ。ひなちゃんのは、別のレストランの制服。ほらほら、このへんが、いいでしょ」
くるっとまわって自分を服を見せてから、陽菜を自分の前に持ってきて、男たちに見せびらかす。
胸もとが強調されるデザインに、自然と男の視線が集まり、陽菜は「えっと、えっと」ともじついてしまう。
「どうだ、ほれほれ。ひなちゃんに誘惑されそうじゃろ」
「……魅力があることは認めます」
「右に同じく」
孝平と司のコメントに、陽菜は「あわわわ」とパニック寸前。
「正直でよろしい。でも、ひなちゃんはあげませーん」
「わかってますよ」
にっこりするかなでに、ため息混じりに孝平が返す。
「それにしても、そんな服、どこから手に入れたんですか」
「もちろん、寮長特権よ。代々受け継がれる物が仕舞ってある倉庫部屋を漁っていたら、見つけました。ふんふんふ~ん」
鼻歌混じりに、いつも以上にご機嫌なかなで。
テーブルを挟み、いつもならお茶会がはじまるところだが。
「お茶の用意、しなくてよかったんですよね」
事前にかなでから言われていたことを孝平が確認する。
「そうだよ。今日はこの格好だからねー。これだ」
どん、と机に置かれたのは、ビアジョッキ。
さらに並べられたのは、たくさんの缶ビール。
孝平が「えっ?」という顔になり、司ですら眉を曇らせる。
「いくらなんでもこれはまずいでしょ、かなでさん」
「心配御無用。これは全部、ノンアルコールビールなのです」
「ほんとだ」
司が手を伸ばして缶を確かめれば、未成年が飲んでも問題ないタイプの飲料。
「ほらほら、美人姉妹が御酌するんだぞ。ありがたく飲め飲め」
「はあ。じゃあ、いただきます」
かなでが孝平のジョッキに注ぎ、司のジョッキには陽菜が注ぐ。
「ひなちゃん、わたしにもちょうだい。ひなちゃんにはわたしが入れるから」
「え? 私は、いいよ」
「こらー。ひとりだけ飲まないなんて、許さないぞー」
四人全員に飲み物が行き渡ったところで、
「それじゃ、みなの元気を祝して、かんぱーい」
「元気なのはかなでさんだけなんじゃ」
「ほらほら、余計なこと言わない。かんぱーい」
「かんぱーい」
声が揃って、ぐびぐびぐびとかなでが一気に空ける。
司も一気に空け、孝平は半分ほど。陽菜はさらにその半分くらいの量を飲んだ。
「さあさあ、いっぱいあるからね。ほら、へーじ」
「あ、どうも」
かなでと司は急ピッチで、それに煽られるように孝平も飲み、陽菜もまたペースを上げて、飲んでいく。
……
…
「きゃはははっ。いや、やっぱり酒はいいねえ」
「かなでさん。もうちょっと声を抑えて」
「なんでー、すっごく気持ちいいよー。ねえ、ひなちゃん」
「ふふ、ふふ、うふふ」
乾杯から一時間近く経って、宴もたけなわ。ただでさえやかましいかなでの声がラウドスピーカーから出るように響いている。
姉の横で、陽菜の顔もいい色に染まっている。熱くなったのか胸もとを少し開き、制服が危うく乱れて健全な男子としてはどう対応すればいいか迷いそうになる。
「なあ、司。これって、ノンアルコールだよな」
「そうだ。実際、俺たち全然酔っていない」
「そうなんだが……。じゃあ、かなでさんと陽菜はいったい」
「俺に聞くな。お前のほうが幼なじみで、詳しいんだろ」
「こらー、男同士、なにをこそこそ話してるかー。飲みが足りん。飲みが」
どばどばどばとジョッキにつがれ、孝平も司もやむなく口をつける。空になればまた、満たされる。
かなでと陽菜も互いにつぎあって、からから笑いながら飲んではお菓子をつまんでいる。
「ひょっとして、別に隠してた酒を飲んでたんじゃないのか、かなでさんは」
「いや。ここにあった缶しか飲んでない。そんな怪しい動きはなかった」
男ふたりは、盛りあがっている姉妹を前にこそこそと。
いったいどうなるのかと不安におののくが、救いはそろそろ飲み物が尽きるということ。
「で、孝平は、わたしとひなちゃん、どっちが好み?」
「は、いったいなにを」
いきなり振られて、孝平は目を白黒。
「だめだよ。ちゃんと見なさい。ね、ね、どっちがいいの?」
正面から、かなでと陽菜が迫ってきていた。にゅっと顔を突き出すかなでに、そこまではしないもののちらちらと孝平をうるんだ瞳で見遣る陽菜。
ふたりとまともに顔を合わせられず、小さくうつむいて。
「好みって、その制服のことですよね」
「おっとぉ。比較するのは制服を着ているわたしとひなちゃんだからね。服だけ切り離すのはなし」
くいくいと、顔も見るようにうながす。
ノンアルコールで酔っぱらっている幼なじみの姉の勢い
に孝平は圧倒されっぱなし。友に目で助けを求めるが、司はどっちにつこうともせずジョッキの相手をしている。
数秒間思考して。
「どっちも、好みです」
「……」
かなでだけでなく、陽菜も、そして司も、がっかりというため息をついた。
「だめだめ。はっきりしない男の子はモテないよ」
かなでが手を、ぷいぷいと振り、陽菜もじっとりした目でそれに同意する。
「はーい。じゃあ、お開きね」
「え?」
イベントが終わって、けろっと立ち上がったかなでを前に、孝平は呆然となる。陽菜も顔に赤みが残っているが、
「酔い」という色はまったくない。
制服姿の姉妹は、来たときと同じく窓から帰っていってしまう。
ぽつんとテーブルに残されたのは、男ふたりと、空き缶の山だった。
嘘酔いはフィーナSS以来ですね(笑) 赤くなった顔の二人に迫られたら、孝平ならずとも戸惑います。
それにしても孝平…それでいいのか? と突っ込んでみたり。果たして本編ではこういう二者択一はあるのでしょうか。
※追記 本文でいくつか修正しました。
普段のお茶会とはちょっとだけ違う雰囲気の、孝平の部屋でのどたばたをお楽しみください(^^) SSタイトルはブタベが付けさせていただきました。さて、孝平はどっちをとるのでしょうか?
“Fortune Arterial ShortStory 【どっちが好き?】 by やまぐう様”
『へっへっへー。こーへー、今から行くからねー』
携帯から飛び出てきたきんきん声に押されるように、孝平は耳を離した。
「ようやく、来るってか」
大きな声は、あぐらをかいてくつろいでいる司にも届いていた。
通話を切った孝平は、友の前で同じくあぐらに。
「ああ。今日はずいぶん遅い――」
「じゃーん。おまたせ」
「こ、こんばんは」
電話から一分もしないうちに悠木姉妹が颯爽と、窓からやってきた。
孝平の部屋に来るのにはそのルートもあるから、それは驚くほどのことではないのだが、窓からなかへ入ってきたふたりの姿を見た男子生徒二名は瞬時、度肝を抜かれた。
「か、かなでさん。その格好は?」
「ふっふっふ。溜まっている男子諸君に、プレゼントだよーん」

手を伸ばしてポーズを決めているかなでが着ているのは、私服でも学院の制服でもない。白いシャツに赤いスカーフがまず目を引き、シャツと真っ赤なスカートはたっぷりとフリルに飾られた、なんとも派手な制服だ。

陽菜もまた、かなでとは違う、レストランっぽい制服をまとっている。フリルこそないが、シャツの前合わせがずいぶんと目立つ、姉に負けないきらびやかなもの。
「これねー、ビアレストランの制服なんだよ。ひなちゃんのは、別のレストランの制服。ほらほら、このへんが、いいでしょ」
くるっとまわって自分を服を見せてから、陽菜を自分の前に持ってきて、男たちに見せびらかす。
胸もとが強調されるデザインに、自然と男の視線が集まり、陽菜は「えっと、えっと」ともじついてしまう。
「どうだ、ほれほれ。ひなちゃんに誘惑されそうじゃろ」
「……魅力があることは認めます」
「右に同じく」
孝平と司のコメントに、陽菜は「あわわわ」とパニック寸前。
「正直でよろしい。でも、ひなちゃんはあげませーん」
「わかってますよ」
にっこりするかなでに、ため息混じりに孝平が返す。
「それにしても、そんな服、どこから手に入れたんですか」
「もちろん、寮長特権よ。代々受け継がれる物が仕舞ってある倉庫部屋を漁っていたら、見つけました。ふんふんふ~ん」
鼻歌混じりに、いつも以上にご機嫌なかなで。
テーブルを挟み、いつもならお茶会がはじまるところだが。
「お茶の用意、しなくてよかったんですよね」
事前にかなでから言われていたことを孝平が確認する。
「そうだよ。今日はこの格好だからねー。これだ」
どん、と机に置かれたのは、ビアジョッキ。
さらに並べられたのは、たくさんの缶ビール。
孝平が「えっ?」という顔になり、司ですら眉を曇らせる。
「いくらなんでもこれはまずいでしょ、かなでさん」
「心配御無用。これは全部、ノンアルコールビールなのです」
「ほんとだ」
司が手を伸ばして缶を確かめれば、未成年が飲んでも問題ないタイプの飲料。
「ほらほら、美人姉妹が御酌するんだぞ。ありがたく飲め飲め」
「はあ。じゃあ、いただきます」
かなでが孝平のジョッキに注ぎ、司のジョッキには陽菜が注ぐ。
「ひなちゃん、わたしにもちょうだい。ひなちゃんにはわたしが入れるから」
「え? 私は、いいよ」
「こらー。ひとりだけ飲まないなんて、許さないぞー」
四人全員に飲み物が行き渡ったところで、
「それじゃ、みなの元気を祝して、かんぱーい」
「元気なのはかなでさんだけなんじゃ」
「ほらほら、余計なこと言わない。かんぱーい」
「かんぱーい」
声が揃って、ぐびぐびぐびとかなでが一気に空ける。
司も一気に空け、孝平は半分ほど。陽菜はさらにその半分くらいの量を飲んだ。
「さあさあ、いっぱいあるからね。ほら、へーじ」
「あ、どうも」
かなでと司は急ピッチで、それに煽られるように孝平も飲み、陽菜もまたペースを上げて、飲んでいく。
……
…
「きゃはははっ。いや、やっぱり酒はいいねえ」
「かなでさん。もうちょっと声を抑えて」
「なんでー、すっごく気持ちいいよー。ねえ、ひなちゃん」
「ふふ、ふふ、うふふ」
乾杯から一時間近く経って、宴もたけなわ。ただでさえやかましいかなでの声がラウドスピーカーから出るように響いている。
姉の横で、陽菜の顔もいい色に染まっている。熱くなったのか胸もとを少し開き、制服が危うく乱れて健全な男子としてはどう対応すればいいか迷いそうになる。
「なあ、司。これって、ノンアルコールだよな」
「そうだ。実際、俺たち全然酔っていない」
「そうなんだが……。じゃあ、かなでさんと陽菜はいったい」
「俺に聞くな。お前のほうが幼なじみで、詳しいんだろ」
「こらー、男同士、なにをこそこそ話してるかー。飲みが足りん。飲みが」
どばどばどばとジョッキにつがれ、孝平も司もやむなく口をつける。空になればまた、満たされる。
かなでと陽菜も互いにつぎあって、からから笑いながら飲んではお菓子をつまんでいる。
「ひょっとして、別に隠してた酒を飲んでたんじゃないのか、かなでさんは」
「いや。ここにあった缶しか飲んでない。そんな怪しい動きはなかった」
男ふたりは、盛りあがっている姉妹を前にこそこそと。
いったいどうなるのかと不安におののくが、救いはそろそろ飲み物が尽きるということ。
「で、孝平は、わたしとひなちゃん、どっちが好み?」
「は、いったいなにを」
いきなり振られて、孝平は目を白黒。
「だめだよ。ちゃんと見なさい。ね、ね、どっちがいいの?」
正面から、かなでと陽菜が迫ってきていた。にゅっと顔を突き出すかなでに、そこまではしないもののちらちらと孝平をうるんだ瞳で見遣る陽菜。
ふたりとまともに顔を合わせられず、小さくうつむいて。
「好みって、その制服のことですよね」
「おっとぉ。比較するのは制服を着ているわたしとひなちゃんだからね。服だけ切り離すのはなし」
くいくいと、顔も見るようにうながす。
ノンアルコールで酔っぱらっている幼なじみの姉の勢い
に孝平は圧倒されっぱなし。友に目で助けを求めるが、司はどっちにつこうともせずジョッキの相手をしている。
数秒間思考して。
「どっちも、好みです」
「……」
かなでだけでなく、陽菜も、そして司も、がっかりというため息をついた。
「だめだめ。はっきりしない男の子はモテないよ」
かなでが手を、ぷいぷいと振り、陽菜もじっとりした目でそれに同意する。
「はーい。じゃあ、お開きね」
「え?」
イベントが終わって、けろっと立ち上がったかなでを前に、孝平は呆然となる。陽菜も顔に赤みが残っているが、
「酔い」という色はまったくない。
制服姿の姉妹は、来たときと同じく窓から帰っていってしまう。
ぽつんとテーブルに残されたのは、男ふたりと、空き缶の山だった。
嘘酔いはフィーナSS以来ですね(笑) 赤くなった顔の二人に迫られたら、孝平ならずとも戸惑います。
それにしても孝平…それでいいのか? と突っ込んでみたり。果たして本編ではこういう二者択一はあるのでしょうか。
※追記 本文でいくつか修正しました。
by scluge
| 2008-01-17 21:02