2008年 02月 14日
SS『冬のないカレンダー』(バレンタイン編) |
日曜日…ごろだったかな。昨日のエントリーにもある岡崎律子さんの曲『冬のないカレンダー』を偶然聞いて(『林原めぐみの東京ブギーナイト』の録音テープ)、思わず、『よし、この季節ならこの娘さんで描かなきゃだめだろう!!』と脈絡もなく思いついてしまい、気がついたら下の絵が書きあがっていました。
更に脈絡も無く今回の絵を早坂様にお見せして『ぜひバレンタインのお話を!!』と無茶なお願いをしてしまいました。
…と言うわけで、勝手なお願いにもかかわらず、お話を書き上げてくださった早坂様に感謝です。恋人同士にバレンタインは必須のイベントですが、この二人にはどんな一日になるか、さてさて。
【オリジナルショートストーリー 冬のないカレンダー
「逃がすつもりはないから覚悟、し・て・ね♪」 by 早坂充様】

「あの・・・一緒に帰ってもいい・・・かな?」
「お、おう」
2月14日の放課後。今朝はどこもかしこもバレンタインの話題で あふれかえっていた。
教室でももらえただのもらえないだの言う男共と、渡せた渡せないって言う女共の悲鳴や号泣やらもはや何がなんだかの状態になっていた。
俺はというと別にこういうどっかのお菓子会社が販売促進の為に企画したイベントなどには興味は無い・・・はずだったのだが。
アイツが朝からそわそわしてるのを見てたら俺も落ち着かなくなった。
そして放課後に誘われた。
緊張するなって言う方が無理だと思う・・・はずだったのだが。
「なぁ・・・やっぱりこれ、するのか?」
「私寒いもん!」
「ならお前だけ巻いておけばいいだろう?」
「これは二人専用だよ?」
二人専用って・・・
「使い方の注意に二人でつかってくださいってあるんだから」
「手作りの物にそんな注意なんてないだろう?」
「だから、作者の私が作ったの」
「・・・」
「ね、ね?」
「わかった、行くぞ」
俺は手早くアイツがしている長すぎるマフラーの残りを俺の首に巻き、そして首が絞まらないよう腕を出す。
「えへへ♪」
嬉しそうな顔をして抱きついてくる。
コートを着ているのに、アイツの暖かさが柔らかさと共に伝わってくる。
「それじゃぁ、公園にれっつごー!」
冬の公園は寒々しい。
木々の葉は落ち、とげとげしく感じる。
時折吹く風が俺の顔をないでいく。
俺は目線をアイツの方へ向ける。そこには寒風なんて関係ないって言ってるような、笑顔のアイツの顔があった。
「・・・」
「ん? なに?」
「あ、いや・・・ちょっと人生について考えてただけだ」
「え、えぇぇぇ!!」
「おい、何をそんなに驚いてる?」
「えっと、私は子供は2人は欲しいなぁ・・・男の子と女の子がいいなぁ」
「・・・」
「別にお金持ちじゃなくていいから、幸せな家庭が築ければいいかな。ね、そう思うでしょ?」
「何を盛大に妄想してるんだ!」
「えぅ」
軽く頭をはたいた。
「だってぇ、人生計画を考えてたんでしょう?」
「・・・」
「・・・」
びゅぅ、とひときわ強い風が吹いた。
「とりあえずそこのベンチに座りましょう?」
「・・・そうだな、不毛な事はやめにしよう」
ベンチに座ってからもアイツはずっとそわそわしていた。
「・・・」
「・・・」
寒空の下、無言の時間が過ぎていく。
そう言えば何かの小説に書いてあったっけ。お互いを感じる距離で過ごす無言の時は幸せだって。
「・・・寒い」
この寒さの下ではとてもそうは思えなかった。
「そろそろ本題に入ってくれないか?」
「えぇ! もうちょっと心の準備をする時間が欲しいよぉ」
「それで風邪ひいてもいいのか?」
「大丈夫だよ、風邪なんてひかないから。お母さんも言ってたよ。
あなたは風邪なんて引かないから安心よね、って」
「・・・」
それって、まぁ・・・そう言う意味なんだろうな・・・
「私は丈夫なだけが取り柄だもん♪」
知らないって幸せな事もあるんだよな、きっと。
俺は思わず涙を流しそうになった。
「ふぅ・・・あの、じつはね・・・お願いがあるの」
「お願い?」
てっきりチョコの事かと思ったのだけど、違ったようだ。
俺は少しがっかりして・・・がっかりして?
ということは期待してたのか?
そんな葛藤をよそにアイツは話を続ける。
「あのね、チョコを作ったの。試作品なんだけど・・食べて感想聞いても、いい?」
・・・要するに試食係か。
ということは誰かにあげる本命があるって事、だよな?
そして俺には試作品ってことは・・・もしかして?
「さぁ、どうぞ♪」
俺達はつきあってるはず・・・だったよな?
それなのに俺は試作品で本命は別で・・・
「ねぇ、食べて感想聞かせてよぉ」
「あ、あぁ・・・」
俺はアイツの手からチョコを受け取って口に運んだ。
「ね、ねぇ・・・どう?」
そのチョコは手作りのようだった。
市販のチョコとは味が違うように感じる。
甘いはずなのに苦い。たぶん・・・これが大人の味なんだろうな。
「・・・だいじょうぶだよ、美味しいよ」
「本当?」
「お前に嘘言ってどうするんだよ」
「えー、だって嘘言われた事多いもん!」
そんな過去もあったよな。そう、過去なんだよな・・・
「これは美味しい、俺が保証するよ」
「本当に本当?」
「しつこい、本当だ。それじゃぁ用件がすんだんだから俺は帰るぞ!」
これ以上ここにいたら何を言うかわからない。
俺はベンチから立ち上がろうとして・・・
「えい!」
「っ!」
アイツにマフラーごと引っぱられた。
「何をするんだ! 危険じゃないか!」
「私悪くないもん、マフラーしたままたった方が悪い!」
そういえばマフラーしたままだったな・・・
「それに用事終わってないもん」
「まだ何かあるのか?」
「・・・これ、バレンタインのチョコ、もらってくれる?」
「・・・はい?」
「手作りしたから味が心配だったの、だから先に食べてもらって、
美味しいって言ってくれたらちゃんと渡そうかなって思って・・・」
「・・・」
「ね、ねぇ? どうしたの?」
「おーまーえーはー、何を紛らわしいことしてるんだっ!」
「ひゃぅ!」
「勘違いさせるなよな!!」
「勘違い?」
「あっ」
「もしかして、他の人にあげると思って妬いてくれたの?」
「・・・」
そうだけど、そんなこと言えるはずが無かった。
「だいじょうぶだよ、私にはあなたしかいないんだから」
恥ずかしい台詞をさらっと言ってのけるアイツの微笑んだ顔は、すべてを包み込むような暖かさを持っていた。
・・・と思ったら顔を真っ赤にした。
「わ、私、恥ずかしいっ!」
俺はとっさに抱きしめる。
「逃げるな、俺だって恥ずかしいこと言われたんだぞ?」
「や、そんなこといったって、言った方が恥ずかしいよぉ」
「言われた方も恥ずかしい」
「言った方が恥ずかしい!」
「なら試してやる。俺だってお前だけだ!」
「っ!」
「・・・」
「・・・」
「言った方が恥ずかしいな」
「言われた方も恥ずかしいね」
「・・・はは」
「・・・あはは」
「しばらくこうしてても、いいか?」
「うん、寒いからぎゅっとして」
「青春してるわね、わが娘は」
「わかってるのかな~、あの子達。見てる方が一番恥ずかしい事を」
と、たまたま?公園の入り口付近を通ってた俺達の母親に目撃されてあとでたんまりからかわれた。
見ているほうが恥ずかしい、母親’sのご意見まったくそのとおりの展開でした(^^; そういえば、ちょうど去年のこの時期にこのSSシリーズ『冬のないカレンダー』は始まったんですよね。あの時と同じ公園で、一年前とはちょっとだけ違う二人。来年の今頃はどうなっているのやら(笑)
それにしても、渡す相手に試食させる…いいのか、それは?(^^; それがこの女の子だとアリだと思ってしまうから早坂様のこのSSだとも言えるのです。多分(を
更に脈絡も無く今回の絵を早坂様にお見せして『ぜひバレンタインのお話を!!』と無茶なお願いをしてしまいました。
…と言うわけで、勝手なお願いにもかかわらず、お話を書き上げてくださった早坂様に感謝です。恋人同士にバレンタインは必須のイベントですが、この二人にはどんな一日になるか、さてさて。
【オリジナルショートストーリー 冬のないカレンダー
「逃がすつもりはないから覚悟、し・て・ね♪」 by 早坂充様】

「あの・・・一緒に帰ってもいい・・・かな?」
「お、おう」
2月14日の放課後。今朝はどこもかしこもバレンタインの話題で あふれかえっていた。
教室でももらえただのもらえないだの言う男共と、渡せた渡せないって言う女共の悲鳴や号泣やらもはや何がなんだかの状態になっていた。
俺はというと別にこういうどっかのお菓子会社が販売促進の為に企画したイベントなどには興味は無い・・・はずだったのだが。
アイツが朝からそわそわしてるのを見てたら俺も落ち着かなくなった。
そして放課後に誘われた。
緊張するなって言う方が無理だと思う・・・はずだったのだが。
「なぁ・・・やっぱりこれ、するのか?」
「私寒いもん!」
「ならお前だけ巻いておけばいいだろう?」
「これは二人専用だよ?」
二人専用って・・・
「使い方の注意に二人でつかってくださいってあるんだから」
「手作りの物にそんな注意なんてないだろう?」
「だから、作者の私が作ったの」
「・・・」
「ね、ね?」
「わかった、行くぞ」
俺は手早くアイツがしている長すぎるマフラーの残りを俺の首に巻き、そして首が絞まらないよう腕を出す。
「えへへ♪」
嬉しそうな顔をして抱きついてくる。
コートを着ているのに、アイツの暖かさが柔らかさと共に伝わってくる。
「それじゃぁ、公園にれっつごー!」
冬の公園は寒々しい。
木々の葉は落ち、とげとげしく感じる。
時折吹く風が俺の顔をないでいく。
俺は目線をアイツの方へ向ける。そこには寒風なんて関係ないって言ってるような、笑顔のアイツの顔があった。
「・・・」
「ん? なに?」
「あ、いや・・・ちょっと人生について考えてただけだ」
「え、えぇぇぇ!!」
「おい、何をそんなに驚いてる?」
「えっと、私は子供は2人は欲しいなぁ・・・男の子と女の子がいいなぁ」
「・・・」
「別にお金持ちじゃなくていいから、幸せな家庭が築ければいいかな。ね、そう思うでしょ?」
「何を盛大に妄想してるんだ!」
「えぅ」
軽く頭をはたいた。
「だってぇ、人生計画を考えてたんでしょう?」
「・・・」
「・・・」
びゅぅ、とひときわ強い風が吹いた。
「とりあえずそこのベンチに座りましょう?」
「・・・そうだな、不毛な事はやめにしよう」
ベンチに座ってからもアイツはずっとそわそわしていた。
「・・・」
「・・・」
寒空の下、無言の時間が過ぎていく。
そう言えば何かの小説に書いてあったっけ。お互いを感じる距離で過ごす無言の時は幸せだって。
「・・・寒い」
この寒さの下ではとてもそうは思えなかった。
「そろそろ本題に入ってくれないか?」
「えぇ! もうちょっと心の準備をする時間が欲しいよぉ」
「それで風邪ひいてもいいのか?」
「大丈夫だよ、風邪なんてひかないから。お母さんも言ってたよ。
あなたは風邪なんて引かないから安心よね、って」
「・・・」
それって、まぁ・・・そう言う意味なんだろうな・・・
「私は丈夫なだけが取り柄だもん♪」
知らないって幸せな事もあるんだよな、きっと。
俺は思わず涙を流しそうになった。
「ふぅ・・・あの、じつはね・・・お願いがあるの」
「お願い?」
てっきりチョコの事かと思ったのだけど、違ったようだ。
俺は少しがっかりして・・・がっかりして?
ということは期待してたのか?
そんな葛藤をよそにアイツは話を続ける。
「あのね、チョコを作ったの。試作品なんだけど・・食べて感想聞いても、いい?」
・・・要するに試食係か。
ということは誰かにあげる本命があるって事、だよな?
そして俺には試作品ってことは・・・もしかして?
「さぁ、どうぞ♪」
俺達はつきあってるはず・・・だったよな?
それなのに俺は試作品で本命は別で・・・
「ねぇ、食べて感想聞かせてよぉ」
「あ、あぁ・・・」
俺はアイツの手からチョコを受け取って口に運んだ。
「ね、ねぇ・・・どう?」
そのチョコは手作りのようだった。
市販のチョコとは味が違うように感じる。
甘いはずなのに苦い。たぶん・・・これが大人の味なんだろうな。
「・・・だいじょうぶだよ、美味しいよ」
「本当?」
「お前に嘘言ってどうするんだよ」
「えー、だって嘘言われた事多いもん!」
そんな過去もあったよな。そう、過去なんだよな・・・
「これは美味しい、俺が保証するよ」
「本当に本当?」
「しつこい、本当だ。それじゃぁ用件がすんだんだから俺は帰るぞ!」
これ以上ここにいたら何を言うかわからない。
俺はベンチから立ち上がろうとして・・・
「えい!」
「っ!」
アイツにマフラーごと引っぱられた。
「何をするんだ! 危険じゃないか!」
「私悪くないもん、マフラーしたままたった方が悪い!」
そういえばマフラーしたままだったな・・・
「それに用事終わってないもん」
「まだ何かあるのか?」
「・・・これ、バレンタインのチョコ、もらってくれる?」
「・・・はい?」
「手作りしたから味が心配だったの、だから先に食べてもらって、
美味しいって言ってくれたらちゃんと渡そうかなって思って・・・」
「・・・」
「ね、ねぇ? どうしたの?」
「おーまーえーはー、何を紛らわしいことしてるんだっ!」
「ひゃぅ!」
「勘違いさせるなよな!!」
「勘違い?」
「あっ」
「もしかして、他の人にあげると思って妬いてくれたの?」
「・・・」
そうだけど、そんなこと言えるはずが無かった。
「だいじょうぶだよ、私にはあなたしかいないんだから」
恥ずかしい台詞をさらっと言ってのけるアイツの微笑んだ顔は、すべてを包み込むような暖かさを持っていた。
・・・と思ったら顔を真っ赤にした。
「わ、私、恥ずかしいっ!」
俺はとっさに抱きしめる。
「逃げるな、俺だって恥ずかしいこと言われたんだぞ?」
「や、そんなこといったって、言った方が恥ずかしいよぉ」
「言われた方も恥ずかしい」
「言った方が恥ずかしい!」
「なら試してやる。俺だってお前だけだ!」
「っ!」
「・・・」
「・・・」
「言った方が恥ずかしいな」
「言われた方も恥ずかしいね」
「・・・はは」
「・・・あはは」
「しばらくこうしてても、いいか?」
「うん、寒いからぎゅっとして」
「青春してるわね、わが娘は」
「わかってるのかな~、あの子達。見てる方が一番恥ずかしい事を」
と、たまたま?公園の入り口付近を通ってた俺達の母親に目撃されてあとでたんまりからかわれた。
見ているほうが恥ずかしい、母親’sのご意見まったくそのとおりの展開でした(^^; そういえば、ちょうど去年のこの時期にこのSSシリーズ『冬のないカレンダー』は始まったんですよね。あの時と同じ公園で、一年前とはちょっとだけ違う二人。来年の今頃はどうなっているのやら(笑)
それにしても、渡す相手に試食させる…いいのか、それは?(^^; それがこの女の子だとアリだと思ってしまうから早坂様のこのSSだとも言えるのです。多分(を
by scluge
| 2008-02-14 22:14
| 絵